風のささやき

藪の中

時々、嘘をついて
事をごまかすことを覚えた上の子供たち
小さい頃に何度も、オオカミが来たと嘘をついた
羊飼いの話を聞かせて嘘はいけないと
教えたつもりだったのですが

先日の夜も双子の片割れの次男が
もう一人の片割れに噛まれたと言って
半べそをかきながら洗面所にいた
僕の所にやってきました

確かにその腕には歯形があり
それは動かしようの無い証拠

小学生にもなって噛むとは何事と
布団に入っていた片割れの長男の所に飛んでいき
謝るようにと怒りました

すると自分は噛んでいないという回答
「えっ、そうなの?」という感じで
怒りをどこに向ければいいのかという状態になりました

次男に再度確認すると噛んだとのこと
どちらの言い分が正しいのか分かりません
けれど確かに証拠の歯形はついています

二人の話を聞き問い詰めていたのですが
結局どちらもやっていないと言い張ります
誰もその現場を見ていなかったので証人もおらず
芥川龍之介さんの「藪の中」のようでした

二人とも布団の上でいい争っていたのですが
いつまでもどちらも折れないので
結論が出るまで二人で話あって来いと
別の部屋に追い出しました

外に出た二人
その会話を聞いていると
「本当のことを言ってくれよ」とか
「お前が本当のことを言わないからだろう」とか
そうして二人で押し黙る
低レベルな議論を続けていたので
笑ってしまいました

最後にドアが開いて次男が言いました
「二人がやりました」
え? そんな姑息な言い訳で、責任を分散させるのかと思い
「二人でやったと言えば、許されると思うのか?」と問い詰めると
本当に二人でやっていたようです

やはり長男が最初に噛んでいたのですが
さらに僕にアピールしようと
次男が自ら手を噛んでしっかりと歯形をつけていたようです

本当にこの人たちは大丈夫だろうかと
その行く末を心配しつつ

「嘘をついたら、誰にも信じてもらえなくなる。
 人を貶めるための嘘なんて、ましてや最低だと」
そんな説教をしていました

「長男曰く、こんなことになるとは思わなかった」との発言もあり
内心では笑いを堪えていたのですが
← エッセイ一覧に戻る