風のささやき

古語り|潮風の村

潮風の村
その白馬の目は
水平線の向こうに何を見ていたのだろう
潮風にたてがみを濡らし
少し涙をためていた
潮風の村
ときおり
白い帆掛け船が漁にでてゆく
潮風の村
わずかばかりの魚で事足りる
小さな村の穏やかな暮らし
潮風の村
畑には身を低くした野菜たち
ローズマリーがそこはかとない村の香水
潮風の村
防風林が守り切れないほどの
激しい風の夜を黒ずんだ石壁の家で暮らす
小さな灯りをともしながら
潮風の村
固いベッドに添い寝する
母親の語る物語は
引き継がれてきた村人の記憶
海に旅立った者たちの不思議な冒険
潮風の村
子守唄は波の繰り返しを真似て
いつの間にか胸を波音で満たし
子供たちは健やかに眠るのでした
潮風の村
星のささやきが
いっそう大きく聞こえる浜辺に
手をつないで空を見上げる
塩気をまとった抱擁
若い二人には流れ星の祝福
潮風の村
懐かしい人たちは眠る
祝祭はいつもその人たちとともに
潮風の村
収穫の祭りに色とりどりの旗が風をはらむ
潮風の村
干された網はすっかりと乾き
海に沈むときを待っている
潮風の村
教会の鐘の音に続く小道では
手に豆のある働き者たちが笑いあう
潮風の村
潮風の村
野道に咲く名もない花のように
この村の賑わいになる
潮風の村
誰もが寝静まった
明るい月夜の岡には
牛たちの祖先の黒い影が重なり
モーと低く鳴く
いつまでも懐かしそうに
海を眺めている
潮風の村
海の夜に釣り糸を垂れて
夜釣りの船が
海霧の中に漂っている
潮風の村
明日の朝にまた
家族の笑顔に会うことを
心待ちしながら
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