夜のほとり
誰かが どこかで泣いていると 夜風が告げる どんな悲しみが溢れて 涙に変わったのだろう けれどそんな事は 日常茶飯事だと うそぶく夜風は 窓からいなくなる 誰にも知られない涙は 胸の中にひとしずくと流れ 指先を浸す誰もいない 冷たい泉になる 眠れないでいた僕の 目がいっそう冴える 心は誰かの痛みに 過敏になろうとする 夜のほとりに 思い悩む時間を せめてもの償いに差しだして 涙は 一つの大きな海に流れつき 他の涙と手を結び 安堵の吐息を漏らすのだろうか すべての悲しみを慰めあう波は 優しき面影の人の 両の手のひらの窪みに やがて凪いでゆき なぜ夜風は悪戯に 誰かの涙を 僕に持ち寄るのか 嘆くことばかり上手になって それを力にできないのに 全ての涙を 両手で優しく受け止めて その訳に耳を澄ます 面影をまた思い描いている
一人くらやみで泣いている人を思い。Last Updated 2026/09