風のささやき

秋の古本市

人通りの多い
商店街の古本市を巡る

無造作に並んだ
色の褪せた背表紙
宝の地図を読み解くように
夢中になっている

今さらながらに
読みたい本がありすぎる
許されている
時間の少なさが恨めしい

けれど覚えきれる
容量も知れたものだから
こぼれ落ちる知識は
諦めようと開き直っている
背中の太陽がぽかぽか温かい

手に持つ重さ以上の何かを
本は教えてくれる
大切な友と話すように

真摯な作者の生の匂いが
一頁一頁から漂ってくる

それがいつの間にか
たくさんの本に埋もれる
重ねられた落ち葉のように
忘れられてゆく寂しさも
古本市には漂っている

何も見落とさないようにと
一冊の本を取りだしページを開く

長い間閉じられていた
古びた紙の匂い
僕を待っていたような
文字に触れる指先に力がこもる

通りの銀杏がたわわに実り
その匂いがほのかに漂っている
うららかな午後に時間を忘れる

商店街の古本市を巡って。Last Updated 2026/10

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