風のささやき

午睡

子供が僕を一生懸命に起こす声が聞こえている
もう夕方になるのか
それでもまだまだ眠り足りなくて
うとうとと眠りに引き戻されそうになりながら

うっすらと開いた眼には
確かにカーテンから漏れている
夏の夕日が白い壁を色づけている
薄い柿色の中で
月桂樹の枝の影が風に揺られている

いつの間にか僕の横には
もう一人の子供が眠っている
さっきまでは騒がしくしていたのに
その静かな寝息を立てているのは
もしかすると小さな頃の僕なのだろうか
僕は夢の中に漂う

人の生はどこからが夢で
どこからが目覚めているのかしら
夢と生は混ざり合い
目覚めていたとして
どこかいつでも夢うつつで

なぜ子供はこんな僕を
目覚めさせようとしているのだろう
僕がいることで君の何かが変わるのかしら
夕暮れに目覚めると寂しすぎるから
このまま朝まで眠ってしまおうと
思っている僕がいるのに

けれどその僕は
本当にここにいるのだろうか
いつでも覚束ない足元の自分を感じ
直ぐにでも波に奪われてしまいそうな
僕は海辺の砂の一粒なのかも知れないのに

見上げる椰子の木の先には
肌を焼き付ける強い陽ざし
青い空は僕の帰って行く墓標
毎日に少しずつ焦がされて行く
灰になる者として

夢の中の風景を
あなたと分かち合うことはできるのかしら
僕自身でさえ言葉では伝えられない
ただ生きられた
体の芯に残る生ぬるい実感を

人はたくさんの眠りに隔たれている
それを橋渡しすることが言葉の力だとしたら
頼りない物と知りつつも
言葉を綴っていくしかないことを
何度も何度も言い直して
その内のどれかが僕の夢を
上手く伝えることができるとして

僕の言葉があなたの夢と
混ざり合うことがあるのかしら
夢と夢はどこで重なり合うのかしら
夢と夢とは重なり合うことで
もっと素敵な夢になるのかしら

僕は目覚めているよ
きっちりと目覚めているから
もう少し眠らせてくれ
沢山の笑顔が僕の中に湧いている
僕はきっと良い人たちと出会って来たのだ

僕は生にどんな夢を見続ければ良いのだろう
柔らかな夕映えが
まだ壁の上で優しい炎を燃やしている

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