風のささやき

踏切の前で

毎日どれぐらいの電車が
この踏切を通り過ぎて行くだろう

けたたましく音を立て
その余韻はやがて鎮まり
またけたたましく音が鳴って

焦れた人が渡る
車は細心の注意を払う
自転車は窮屈そうに
人の隙間を探して通る

窓の外の流れて行く景色を
興味深く眺めているのは
靴を脱いで足を揃える子供たちぐらい

今日の仕事の煩わしさにイライラとする人や
まだ眠り足りない頭の重さに目を閉じる人
新聞の伝える世の中はひどく混乱をしたままで
僕らはそこに暮らしているのだと

僕も毎朝のように電車に乗って
乗客の一人として踏切を
どれぐらいの回数
通りすぎたことだろうか
あまりにも当たり前のことで
記録をつける気持ちにもなれなくて

列車が通りすぎる
風の熱い塊が顔に当たる
風はこんなにも硬く感じられるものなのか
髪が揺れて一瞬目をつむる

線路のわきには薄いピンクの
背の高いタチアオイが
この硬い風を受けて首を振る
それは列車を見送る姿ではなくて
やっかいな物が通りすぎて行くのを
喜んでいる姿なのかも知れないと

沢山の人に急かされるように
踏切を渡り僕は
青い空を見上げる
今日は雲一つない
まるで夏の陽ざしに
焼き尽くされてしまったようだ

この無辺の空の下では
あまりにもちっぽけな僕がいて
僕は泣くこともできる
ずっと放っておかれる子供のように

光の燕尾服をまとって
頭上を横切っていく燕
何をしても自由なはずの僕なのに
沢山の思いを絡ませながら
いつからこんなにも
足を重たく感じているのだろう

僕はメロンパンと
葡萄パンの入った袋を手に
家にと足を速めている
子供がこのパンを待っている
その笑った顔が直ぐにでも見たい

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